街の火 
Luminance of Street
星玄人
Hoshi Haruto
街の灯

夜の街を徘徊するのが好きだったのはカメラを手に持つようになるよりも
ずっと前からでたぶん小学校高学年位からだったと思います。その当時私
は勉強には打ち込むことができずテレビもあまり好きではなかったので、
放課後有り余った時間の大半をマンガを読んだりラジオや歌を聞いたりし
て過したのですが、結局そういう事にそれほど夢中になることも出来ず教
室の片隅や自室でひとり、架空の日常を夢想することにいつも明け暮れて
いました。頭に思い浮かべるのは身近な友人や異性を登場させ、自分に都
合良く作られたおよそ実現性には乏しい幼稚な戯言がほとんどで、とりわ
け得意なことなど無いくせに周囲にあわせるのが嫌いだった私は情欲と自
己愛だけで構成された虚構の世界を構築することで自身を取り巻く現実か
ら逃避したかったのだと思います。今振り返るとその無意味な想像性を創
作などに転化させれば良かったのですが、自意識過剰な性格が現実から得
る雑多な情報に対して身構えさせていたせいか、思春期の過剰な自我の目
覚めを自己認識する事も無く、猥褻な衝動に身を任せる以外は何一つ思い
通りにいかない他人と自分との関係に対する不満と、誰からも必要とされ
ないだろうという不安感がいつも私の思考を支配していました。思い返す
と単に成長期で欲求不満だっただけなのですが当時の私には深刻な問題で、
豊かな現実世界は私にとって屈折や劣等感を呼び寄せる為にしか存在して
いなかったように思います。そんな私が実生活で唯一開放された気分にな
れたのは日が暮れてからの街並を用も無く歩きまわっている時でした。
普段見慣れた忙しい景色に冷たい開放感が混ざりだしたような夜の空気は
昼間よりも透明な輪郭で街を映し出し、自身の妄想世界よりも強く私の幼
い欲望と好奇心を掻き立てていました.........(著者あとがきより抜粋)

並製 表紙特色2色PP加工観音開き/本文特色1色 154頁 写真164点 定価3500円+税
2007年5月14日初版第一刷発行 ISBN 978-4-903141-03-9 C0072 \3500E

制作・編集 伊藤愼一 grafica / デザイン 清水徹 ea / 発行 ガレリアQ
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星玄人,初の写真集.新宿歌舞伎町,横浜などの歓楽街でのスナップショット.
怪しさあり、危なさあり,人恋しさあり.